皆さんお久しぶりでございます
イノベーション事業本部IFグループの荒木です
前回は「近代版画の魅力」
という記事を書かせていただきましたが、その続きとなります。(かなり長くなりました)
今回はタイトルにもある通り「光で楽しむ絵の世界」ということで
版画の世界を光を使って楽しもうという回です
Q.改めて版画ってどんなもの?
A.今回初めて記事を見ていただく方もいると思うので
アールジュネスさんで取り扱っている版画の基本的な特徴を簡単にまとめます
版画は従来「版を使って紙に刷る」技法の総称で
木版、銅版、リトグラフ、シルクスクリーンなど様々な種類があるらしいです(歴史知識は浅くてすみません…)
この点は現代の版画も同様ですが、私がアールジュネスさんの版画で魅力を感じているのは以下のような点です
- 作品の原画を作るイラストレーター、より魅力的にする装飾師、全体の雰囲気を決める額装師など、
複数の専門家が関わることが多いこと - 版画の技法を活かした、光の当たり方・見る角度・距離で版画としての表情が変わること
- 毎日凝視しなくても、生活の中でふと目に入った時に「おっ」と思える存在感があること
- 参加する作家が唯一無二の画風を持っていること
文章だと伝わりにくいので、実際に見ていきましょう!
私が収集している版画は、てぃんくる-はるかぜせつな-先生の作品です
今回は所有している版画の中から、2点ご紹介し作品の詳細や魅力をお伝えします
作品名:雪月華舞 – 催花雨 –
- 仕様:ME(金属板) + 特殊5層樹脂
- 総エディション数:230
- 概寸(h * w):作品本体 265 * 575 mm / 額装 575 * 855 mm / 重量 8.8 kg
- 額装:全体を黒でまとめて、作品が持つ静かさを引き立てるデザインにされています。
-
推しポイント(3つ):1. 多層構造による立体感2. 樹脂による透明感と光の反射3. 白と白桃色を基調として清楚且つ華やかな色使いで触れてしまうと壊れてしまうような繊細さを感じさせる点

こちらに異なる色温度の光を当ててみましょう

左側が昼白色(6500K)、右側が電球色(2700K)です。
昼白色では、作品の細部(ディテール)が際立ち、白が透明感を持つことでより繊細に見えます
一方、電球色では、全体的に暖かみが増し、作品の重厚感が増したように見えます
このように光の色温度によって、作品の印象が大きく変わることがわかります
さらに、別の色を当ててみましょう
今の時代はSwithBotなどでカラーLEDが手軽に扱えるので、様々な色で作品を照らすことができます

いかがでしょうか?
青色の光を当てると、作品全体が水中で漂っているような幻想的な雰囲気になります
紫色の光を当てると、作品が持つ妖艶な雰囲気が強調され、より夢幻的な印象を与えます
一見合わないような黄緑色の光を当てると、作品の白桃色が際立つのと
目が発光して見えるため凛々しい印象を受けます
このように、光の色を変えることで作品の雰囲気が大きく変わり、様々な表情を楽しむことができます
もう一つの作品を見てみましょう。
作品名:Luminous Secretly
- 仕様:漆
- 総エディション数:80
- 概寸(h * w):作品本体 195 * 410 mm / 額装 525 * 630 mm / 重量 4.1 kg
- 額装:奥行のある額装で、密かに自分だけの空間を作り上げている作品にマッチしています
-
推しポイント(3つ):1. 螺鈿(らでん:貝の内側のキラキラした部分)を使用して装飾された蝶2. 緻密な漆背景とイラスト部の切り分け、厳かながらも優雅さを感じさせる点3. 麻の葉模様の漆と和服構造の服+宝石の輝きとドレスの組み合わせによる和洋折衷なデザインが完璧

この作品では光を当てる角度を変えてみましょう

左側が真上から光を当てた状態、右側が左手前から光を当てた状態です
左側は外周の宝石がキラキラと輝きその奥でもキャラクターが輝いて見え
蝶の螺鈿も光を受けて煌びやかに見えます
右側は手前の宝石のみが強調され、キャラクターと蝶は落ち着いた印象になりますが
隠れ家で世界を広げているような雰囲気が出ます
個人的には真上からでは螺鈿が他の反射に埋もれやすく、濃淡が平坦に感じられます
左手前から光を当てることで、螺鈿が静かに輝き、キャラクターや背景に影が出るため立体感が増し、
作品タイトルの「Luminous Secretly(密かに輝く)」のイメージに合っていると感じます
いかがでしたか?
今回は版画の魅力を光の使い方で楽しむ方法をご紹介しました
展示会で壁に掛かっている状態だけでは見えない魅力が、今回お分かりいただけたかと思います
気になって展示会に行かれる方は、ぜひスタッフに声をかけて壁から降ろしてもらい
様々な光の当て方で楽しんでみてください。
(販売会なので購入を勧められるかもしれませんが、購入する気がない場合は先に断りを入れておきましょう)
私自身最近は、版画を「観る」から「飾る」へと楽しみ方のフェーズが変わり始めています
例えば、壁掛けの位置やイーゼル・照明の選定、空調設備の導入など
どうすればより良く飾れるかを考えるようになりました
直近では部屋の照明をシーリングライトからダクトレール+スポットライトに変え
Alexaとスマート照明を使い、音声で色温度や明るさを切り替えられるようにしました
(将来的にはハロゲンライトのような演色性の高い光源も購入したいのですが金額が…)
次回はこのあたりの「版画の飾り方」の楽しみ方についてもご紹介できればと考えています
それではまたお会いしましょう!
