大半の人はチンパンジーよりも無知である

こんにちは。イノベーション事業本部のオリギルです。

私の人に言える趣味の一つに読書があります。ただ読んで終わりだと時間が経ったとき内容を忘れていることに気づいたので、最近は本の要約、感想、アクションプランをまとめるようにしていました。折角なので今回は最近読んで面白いと感じた本のまとめを共有したいと思います。

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣」という本です。今さら私がまとめるまでもなく、2019年に日本でもベストセラーになっている本です。

https://amzn.asia/d/5Mw6j63

 

ギャップマインダーテスト

この本では冒頭、世界の人口、所得、貧困等にまつわる13のクイズが出題されます。

その内の12問を以下のサイトで挑戦できますので、興味のある方はぜひ先にやってみてください。

https://factquiz.chibicode.com

正答率が低くても安心してください。このクイズ、先進国14か国の1万2千人に行った一般調査の平均正当数は12問中2問なんだそうです(2017年当時)。チンパンジーに無作為に答えさせても平均4問正解できるにも関わらず、です(ここでブログの題意を回収します。私が過激な主張をしているわけではありません)。全問正解者は1人もおらず、全体の15%の人が全問不正解だったそうです。興味深いのは高学歴で国際問題に関心の高い人でも正答率が変わらなかったという点です。

なぜこのような結果になるのでしょうか?著者は、人間の本能に基づく「ドラマチックすぎる世界の見方」が原因だと述べています。ほとんどの人は、世界は実際よりも怖く暴力的で残酷だと考えているようです。あなたがもし「世界では戦争、暴力、自然災害、人災、腐敗が絶えず、どんどん物騒になっている。金持ちはより一層金持ちになり、貧乏人はより一層貧乏になり、貧困は増え続ける一方だ。何もしなければ天然資源ももうすぐ尽きてしまう」といった先入観を持っているとしたら危険です。

 

本著ではタイトルの通り世界の見方をゆがめる10の本能について解説していますが、今回はその中から2つピックアップして紹介します。

ネガティブ本能

多くの人は「世界はどんどん悪くなっている」と考える傾向があるようです。実際には世界の平均寿命は過去200年で30歳から70歳にまで延び(※)、極度の貧困は過去20年で半減し、世界の80%以上の赤ちゃんが予防接種を受けられるようになりました。

ネガティブ本能を刺激されるのは

①過去の記憶はあやふやで美化されやすい

②偏った報道で悪いニュースばかりが蔓延る

③状況がよくなっていると言い出せない雰囲気

などが原因だと著者は述べています。

ネガティブ本能を抑えるアクションプランとして、「解決しなければならない問題がある」ことと「状況がよくなっている」ことは両立すると意識することが重要だと思いました。物事の悪い面にばかり目を向けやすいという人間の性質に気づき、緩やかな変化や改善した点にも等しく目を向けることが精神衛生的にもよいのではないかと思います。

※余談ですが、最新の統計では2019年~2021年にかけて世界の平均寿命は1.8年低下したそうです。基本的には右肩上がりで増加していますが、大規模なパンデミックや戦争、飢饉があるとたびたび下がるようです。

 

パターン化本能

人は無意識のうちに何事もパターン化し、それをすべてに当てはめてしまう傾向があります。血液型による性格診断は典型的な例でしょう。これには科学的な根拠がないことはわかりますが、世界のこととなるとそうはいかず、「日本人は真面目で大人しく、アメリカ人は社交的で主張が強い」とか「先進国はこうで、途上国はこう」などとパターン化してしまいます。もちろん物事を分類して傾向を知ることは必要ですが、その傾向が集団のすべてには当てはまらないということには注意が必要です。

パターン化本能を抑止するためのアクションプランは以下です。

①適切に分類する。この本では、「先進国」「途上国」という極端な分類を見直し、所得に応じた4つのレベル分けを提唱しています。1日の所得が2ドル以下の「超低所得」の国に住むのは全人口の9%で、この層の数が半減しているのは前述したとおりです。世界の59%の人はレベル2~3の中所得の暮らしをしており、極端に貧しくもなく裕福でもない暮らしをしています。レベル4の国日本に住む私たちからすると相対的に貧しいのは変わりないので、一緒くたにしてしまうのが問題ではないかと私は感じています。

②同じ集団の中にある違いと違う集団の間の共通項を探す。

③「過半数」に気を付ける。ブログのタイトルにあえて「大半」という言葉を使いましたが、程度を表す言葉の使い方、使われ方には注意が必要です。同じ「過半数」でも51%と99%では雲泥の差です。

 

長くなりそうなのでここまでにしますが、本著では他にも8つのバイアスが取り上げられています。誰にでも当てはまりがちな本能の罠が見つかると思います。ファクトフルネスは世界を正しく見る習慣になりますが、それと同じぐらい日々の生活を助けてくれる習慣になると思いました。また言及されるデータが勉強になるのはもちろん、読み物として非常に面白いです。重そうな内容なので、積読として長らく放置していましたが、読み始めてからは引き込まれてすぐに読み終わってしまいました。各章になぞかけのような副題がついているのですが、章を読み終わる時には意味が分かるようになる感じが個人的に好きでした。著者はアフリカの国々で長く働いた医師で実体験談も印象的です。余命を宣告され、残された時間で家族と共に、人生の集大成と書き上げた本で、著者の魂が乗っている本です。気になった人はぜひ読んでみてください。

それでは。